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総選挙に突入の安倍総理が犯した国連演説での過ち

総選挙に突入の安倍総理が犯した国連演説での過ち

9月20日(米東部時間)に国連で行われた安倍総理の演説は、北朝鮮との対話を拒否するよう各国に呼び掛けるものとなった。これは、前日に行われたトランプ米大統領の強硬路線に沿ったものと日本では見られているが、実は大きな違いがある。ともに、北朝鮮に対して厳しい対応をとると主張したものだが、安倍総理は「対話」を拒否することを明言。しかしトランプ大統領は実は「対話」を拒否するとまでは言っていないのだ。

ワシントンで取材の指揮を執る米公共放送NPRのデスクは次の様に話している。

「その後に総選挙という話を知って、安倍総理のスピーチの意味がわかった。国連での演説は選挙のための日本国内向けのものだったということだろう」

この20年余りNPRで取材をしてきたベテラン・ジャーナリストには、安倍総理の国連演説について感想を求めていた。この演説で、安倍総理は「私の討論をただ一点、北朝鮮に関して集中せざるを得ない」として次の様に話している。

対話による問題解決の試みは、一再ならず、無に帰した。なんの成算あって我々は三度、同じ過ちを繰り返そうというのでしょう。北朝鮮に全ての核・弾道ミサイル計画を、完全な、検証可能な、且つ、不可逆的な方法で放棄させなくてはなりません。その為に必要なのは、対話ではない。圧力なのです

北朝鮮という極めて問題のある国への対応とは言え、民主主義国の首脳が国連の場で対話を拒絶したことになる。この演説は米国のジャーナリストにはどう見えるのだろうかと思い、事前にメールで尋ねていた。

アジア系の米国人である彼は、日本の状況も大まかには把握している。

「安倍総理について、我々と同じような価値観での民主主義者だと私は見ていない。だからトランプともうまが合うんだろう。この演説に正直言って、驚きはない。しかし、日本政府にとっては汚点を残したことになるんじゃないだろうか。対話を拒否するという演説もそうだが、国連の演説を選挙に利用したことは日本では問題になるんじゃないだろうか

ところが、安倍総理の国連演説は日本で問題になっていない。

一方で、トランプ大統領の「北朝鮮を破壊する」という国連演説に対しては多くのメディアが批判の矛先を向けた。NPRのデスクに、米国の受け止めについても尋ねていた。

「勿論、これは米国でも常軌を逸した演説として批判されている」

ただし、と付け加えた。

「もともとトランプには格調高い演説など求められていない。ある意味、トランプらしいという言い方はできる。金正恩をロケットマンと呼ぶのも、トランプ流という言い方はできる。それに、『北朝鮮を破壊する』という表現は、『仮に…』という仮定がついており、これは従来からのトランプ政権の発言からは大きな変化はない

これは意外に感じるかもしれないので、トランプ大統領の演説を記しておきたい。かなり長い演説だったが、北朝鮮について触れたのは全体の一部だ。因みに「完全に破壊する」の部分は次の様に話している。

米国は強力な力と忍耐を持っている。しかし、仮に米国、そして同盟国を防衛することを強いられるならば、我々は北朝鮮を完全に破壊する以外に選択肢はない。ロケットマンは自らと自らの政権にとって自殺行為をしていることに他ならない。米国は(北朝鮮を破壊する)準備を整えており、その意志と能力を有している。しかしそうならないことを願う

トランプ大統領のこの発言に北朝鮮側も反発しており、緊張を煽るものとなっていることは間違いない。ただ、そのトランプ大統領でさえ、「対話を拒否する」とまで明言はしていないことは留意しておいた方が良い

トランプ大統領は「対話は解決策ではない」とツィートしたと日本では以前報じられているが、トランプ大統領は「Talking is not the answer」、つまり「対話は答えではない」と言っているだけだ。「答え」は北朝鮮が核を放棄することである以上、「対話」が答えということはあり得ない。しかし、だからと言って、このツィートを、対話を否定しているとまで読むのには無理がある。

つまり、トランプ大統領は首脳としては品位を欠く演説をしたわけだが、北朝鮮への対応としては従来からの「全ての選択肢がある」という範囲で発言を続けているのである

一方、安倍総理は国連の場で北朝鮮との対話を拒否することを明言してしまった。これは、自ら選択肢を狭めてしまったということである。もとより外交というのは様々な選択肢を勘案して進めるものだ。それを考えた時、安倍総理の演説は後々の日本政府の対応を縛るものとなってしまうことは間違いない。

普通に考えたら、日朝間で公式、非公式を問わず交渉を行う状況は来る。そうでなければ、逆に日本は蚊帳の外に置かれる事態になる。仮に、米朝が協議を始めた場合でも、日本はその推移を見守るだけなのだろうか?或いは、この国連演説が無かったかのように対応するのだろうか?

総選挙の結果の如何に関わらず、何れ検証を求められることになるだろう。

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