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拉致問題は前進するか 蓮池透 ×石丸次郎対談 ③

拉致問題は前進するか 蓮池透 ×石丸次郎対談 ③

ジャーナリスト・石丸次郎と元拉致被害者家族会事務局長の蓮池透さん

石丸:日本がインテリジェンスを結集したとして、拉致被害者の誰が、どこにいるのか探るのというのは極めて難しいと思います。
蓮池:難しいでしょう。拉致対策本部(拉致対)はそれなりに一生懸命にやっているんですよ。韓国や中朝国境に毎月のように行っている人も中にはいて、情報を集めている。でも、この間やってきたことは拉致対なんてそっちのけなんです。だから彼らも怒っているし、最初から外務省の茶番だとか言う人もいます。日本政府が一枚岩になっていないと思うんです。安倍さんに「外務省が何とかしろ」と言われて、外務省が「我々の手で何とかしましょう」とやっているような気がします。拉致対はスルーされていて、彼らも面白くないと思います。
私は、拉致問題の本当の解決とは、本当はどうなっているのかを明らかにすることだと思います。「被害者全員返せ」というのは、立場の前提かもしれませんけれど、それを政府方針に決めちゃうと、身も蓋もなくなってしまう。もうちょっと柔軟にやらないと。
アイ・アジア:「全員返す」ということが入口になっています。だから先に行かないのではないでしょうか。
石丸:私は「完全なる安否確認」を求めるというやり方がよいと思います。「二度焼き」してDNAも分からないような遺骨を持ってくるのではなく※、もし万一亡くなっているのならば、亡くなっているという確かな証拠によって相互に確認するというやり方です。
真相の解明というのは、もちろんきちんとやっていかなければならないのだけれど、安否確認と同時でなくてもいいと思います。被害者家族には高齢の方が多く時間がないので、とにかく生きている人を早く返してもらうことを最優先させる。そのために安否確認を先行させる。日本人拉致が、いつどのような経緯で、誰の指令によって、どの組織が実行したのかというような経緯の究明を同時に求めたら、時間ばかりが過ぎてしまう。それから実行責任者の処罰は放棄する。実行者の処罰は無理です、北朝鮮の体制では。なぜならば、それは責任が金正日氏に行き着くからです。
蓮池:金日成氏にも行き着く。
石丸:そうです。最高指導者の責任問題に行き着くような提案を飲むことは、今の北朝鮮の体制ではできません。そのような案を内部検討することも誰にもできないでしょう。そんなことをすれば、担当者は最悪の政治犯とされてしまうかもしれない。だから、日本側が指導者の責任問題に触れるような提案をすれば、北朝鮮側にしたらテーブルをひっくり返さざるを得なくなります。
ですから、拉致問題を早く前進させようとするなら、責任者の引き渡しとか処罰の件は求めない、いったん放棄することが必要になってくると思います。事件各々の真相の究明は必要でしょうけれど、安否調査とは別に時間をかけてゆっくりでいい。言い方を代えると、真相究明の問題は次代に委ねるということです。
さらに拉致被害者の補償に関する協議も、生存者の帰還を最優先にするなら先延ばしてもいいでしょう。被害者に対する補償、償いは当然必要ですが、今北朝鮮側が、傷の深い拉致問題の解決に動こうとしているのは、やはり見返り、対価が欲しいからです。被害者に対する補償と見返りの収支が、トータルでプラスになる見込みがあるから乗ってくるわけです。
「完全なる安否確認」が最優先、真相究明は相互約束して別途進行させる。そのために共同調査委員会を作り、日本の担当官が2年3年、5年北朝鮮に事務所を作って常駐する形が望ましいと思う。それもあくまで真相究明自体を目的にして、誰かを処罰をするとかはしない、このような枠組みが2004年か05年あたりから実行できていたら、、拉致問題はもっと早く前に進んでいたと思います。
蓮池:それができなかったわけです。
(続く)

※金正日政権は、死亡と通告した拉致被害者6人のうち、松木薫さんと横田めぐみさんのものとする遺骨を日本側に提供したが、高温で二回に渡って焼かれていたうえ粉々に砕かれており、DNA検査が困難であった。横田めぐみさんのものとされた遺骨は、帝京大学法医学研究室と警察庁科学警察研究所で鑑定が行われ、帝京大鑑定では「横田さんものではない二人分の遺骨」という結果が出された。しかし、後に英国の科学誌「ネイチャー」は、「遺骨は汚染されていた可能性があるためDNA鑑定では結論が出せない可能性がある」と問題提起した。

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