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名誉毀損か言論封殺か DHC吉田会長訴訟始まる  被告が反論「社会的強者が批判を嫌っての訴訟」

DHCの看板
DHC吉田会長に訴えられた澤藤統一郎弁護士

化粧品会社DHCの吉田嘉明会長が、ブログに書かれた内容で個人と会社の名誉を傷つけられたとして、執筆した弁護士に対して損害賠償の支払いを求めた裁判が、8月20日、東京地方裁判所で開かれた。吉田会長は自身についてブログや記事で批判した弁護士やジャーナリストを相次いで訴えている。裁判で、被告の弁護士は「社会的な強者が自分に対する批判を嫌って裁判を起こしたもので、このような裁判は法の許すこところではない」と主張して争う姿勢を示した。(アイ・アジア/鈴木祐太)

●吉田DHC会長「ブログで名誉棄損2000万円払え」

訴えられているのは東京弁護士会の澤藤統一郎弁護士。
訴状などによると、澤藤統一郎弁護士は自身のブログに、吉田会長が渡辺喜美議員に8億円を貸し付けたことについて「金で政治を買おうというこの行動は徹底して批判されなくてはならない」などと書き、吉田会長と会社としてのDHCの名誉を毀損したとして、吉田会長は、総額2000万円の損害賠償の支払いを求めている。
8月20日に東京地方裁判所で開かれた初めての裁判で、澤藤弁護士はブログの記述を認めた上で、
「仮にもし、私のブログによる言論について、いささかでも違法の要素ありと判断されるようであれば、およそ政治に対する批判的言論は成り立たなくなる」と述べた。

●「不透明な資金が渡辺議員へ 批判甘受すべき」

さらに、澤藤弁護士は裁判所に対して、訴えを却下するよう求めて、次のように述べた。
「仮に私のブログによる表現によって原告らが不快に感じるところがあったとしても、彼らはそれを受忍しなければなりません。原告両名はこの上ない経済的強者です。サプリメントや化粧品など国民の健康に直接関わる事業の経営者でもあります。原告らは社会に多大の影響を与える地位にある者として、社会からの批判に謙虚に耳を傾けるべき立場にあります。
それだけではありません。原告吉田は、明らかに法の理念に反する巨額の政治資金を公党の党首に拠出したのです。しかも、不透明極まる態様においてです。この瞬間に、原告らは、政治家や公務員と同等に、拠出したカネにまつわる問題について国民からの徹底した批判を甘受すべき立場に立ったのです。これだけのことをやっておいて、「批判は許さない」と開き直ることは、それこそ許されないのです」

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裁判後の報告会の様子

●吉田会長側 賠償額を増額も検討

これに対して原告の吉田会長の弁護人は、「社会的に信用のある弁護士が執筆したブログであり、多くの人が信用する恐れが有る」と主張し、損害賠償の額を2000万円から更に増額する考えを明らかにした。
裁判で、吉田会長の弁護人は、「ブログの記載は事実を書いたのか、論評なのか」と澤藤弁護士に尋ねた。これに対して被告側の主任弁護士は「論評だ」と答えた。
裁判長は石栗正子裁判官。次回の裁判は9月17日午前10時30分から東京地方裁判所705号法廷で開かれる。

●10件にのぼる吉田会長による提訴

澤藤弁護士の弁護団によると、吉田会長が自身をブログや記事で批判した弁護士やジャーナリストに対して名誉毀損で訴えた裁判は10件にのぼるという。裁判の後に東京弁護士会で開かれた報告集会で、澤藤弁護士は、
「これは金にものを言わせて言論を封殺するいわゆるスラップ訴訟だ」
と発言。
ジャーナリストの北健一氏は、
「訴えることによって、委縮させるのが狙いだ。黙らないということが大事」と述べて吉田会長の姿勢を批判した。また、上智大学の田島泰彦教授(メディア法)は、
「こうしたスラップ訴訟は損害賠償額の高額化の中で出てきたもので、表現の自由やスラップ訴訟対策を考えていなかければいけない」
と訴えた。
参加者からは、仮に勝訴しても被告には多大な負担が生じることから、こうした訴訟の提起について一定の歯止めをかける必要があるのではないかという意見も出された。

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